ウイスキーの水割りをじゃぶじゃぶ飲む夜

引っ越しをして、働き方を在宅中心に切り替えて2週間が立った。先月まで全日プランで登録していたコワーキングを週1利用のプランにして、「一回在宅ワークに挑戦してみよう」と覚悟を決めてみた。

周りからは「しげはインドアタイプじゃないから絶対無理」「在宅なんて続かない」と言われた。浪人時代、「偏差値50以下のお前に神戸大学は無理」と言われまくったことを思い出した。その後、気合いと根性で無理やり成績を上げて見事に合格を果たした僕には、なんとなく「周囲からの反対は目標達成の前フリ」的な経験則がある。これに則れば、僕は見事に在宅ワーカーになれる。そう思っていた。

(ちなみに無理して成績を伸ばした入った大学は僕にとってはいわゆる「分不相応」で、2回も留年してしまったのは恐らくそのためでした)

しかし実情は真逆。みんな預言者ですか。引っ越しでだいぶお金が減ったから今月は節約の意味も込めて外食を減らしている。それもあって、家から出る用事がない。たしかに朝起きて、シャワー浴びて朝ごはんを食べて着替えて、その後に移動する必要がないからすぐに仕事をスタートできる。夜くらいまで働いて、その後はそのまま家で優雅に過ごす。外に出るのはたまの用事の時だけ。そういう意味ではプラス。職人、いや仙人ライターになるつもりだった。

最初の1週間は、この生活もいずれ慣れると思い耐えていた。舐めていた。孤独感。全然周りに人がいない。Googleのスマートスピーカーに「OK Google、明日の天気教えて」と話しかけるくらいしか言葉を発しない。家から出ないから天気なんて知る必要ないのに。

ある夜、気づけば僕はキッチンに椅子を出して、換気扇の下でタバコを吸っていた。基本は家の外で吸うようにしているのだが、その日は夜冷え込んでいたので、換気しながらの喫煙。東京に住む友人と長電話をしていた。LDKの部屋が寂しかったので、無意味にテレビを流しながら。見てもいないし聞いてもいないから何の番組かも覚えていない。

だらだら話した。友人は電話の途中から焼酎を飲み出した。僕も何か飲みたくなり、キンキンに冷やしたサントリーの角瓶の眠る冷蔵庫の元へ。ロックでガツンと行く気分ではなかったので、浄水された水で割って飲み始めた。薄い。薄いから水のようにじゃぶじゃぶいける。ただ一応ウイスキーはしっかり入ってるので、ちゃんと酔っ払う。なんだこれ。想定していた在宅ワーク生活と全然違う。ただのかまってちゃんじゃないか。状況を心配してくれた友人が旅行に誘ってくれた。4月、男2人で台湾に行ってきます。

その翌日、1週間に一度やってくるコワーキングを使える日だった。久しぶりに家から出て、三宮へ。久しぶりのスタッフさんや、他の利用者の方と挨拶を交わし、仕事開始。10時に開始して、あっという間に15時。お昼ご飯を食べ忘れた。家から持ってきたお弁当を食べ、食べ終わってすぐ再開。気づいたら21時になっていた。ものすごく集中できて、かつ疲労感もそこまでなかった。

家での仕事もべつに悪くない。生産性もそこまで落ちてはない。ただ、生活空間と仕事空間を分けることの意義を強く感じた。帰り際に、来月から全日プランに戻すことをスタッフさんに告げた。手続き完了。僕の在宅ワーク生活は今月で終了です。預言者のみなさん、ご忠告ありがとうございました。

とはいえ、あと2週間は在宅中心の生活。どうせ最後の在宅ワークだし、気合いを入れ直そうと思っていたところ、翌日夜に家のWiFiが壊れた。無理やり仕事を切り上げた。修理依頼をしたところ、来週月曜に来るらしい。それまで何もできない。

僕は無意識にキッチンに向かっていた。換気扇をONにし、タバコに火をつけ、冷蔵庫の元へ。

ウイスキーの水割りを作って、じゃぶじゃぶ飲んでいた。

なんだこれ。